海上保安レポート 2026

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海と命を支える、新しい仲間を求めて


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海上交通の安全を守る

8 海をつなぐ


語句説明・索引

8 海をつなぐ > CHAPTER II. 各国海上保安機関との連携・協力
8 海をつなぐ
CHAPTER II. 各国海上保安機関との連携・協力

国際犯罪組織が関与する犯罪の発生や、事故・災害の大規模化が進む等、海に関する問題が複雑・多様化する中、これら問題に対処するには、海でつながる諸外国と連携・協力して対処することが極めて重要です。海上保安庁では、諸外国との協議や合同訓練等を通じ、これら海上保安機関間の協力関係を強固なものに発展させるよう主導し、様々な分野で連携・協力を図っています。

多国間での連携・協力
1 世界海上保安機関長官級会合(CGGS)

海上保安庁では、法の支配に基づく海洋秩序の維持等の基本的な価値観を共有し、世界の海上保安機関が結集して連携・協力を深めるため、平成29年から世界各国の海上保安機関等のトップが一堂に会する「世界海上保安機関長官級会合」を日本財団とともに創設し、開催してきました。第1回(平成29年)および第2回(令和元年)では安倍総理大臣(当時)が、第3回(令和5年)では岸田総理大臣がレセプションにおいてスピーチし、世界各国から来日した海上保安機関等のトップを前に海上保安機関による連携・協力の重要性を発信しました。

第4回(令和7年)はイタリア・ローマにおいてイタリア沿岸警備隊主催により開催され、海上保安庁長官はイタリア沿岸警備隊長官と共同議長を務めました。日本で創設された会合が海を渡り他国でも開催され、過去最大となる115の海上保安機関等の参加を得て、名実ともにグローバルな会合になりました。

会合の様子

会合の様子

海上保安庁長官による挨拶

海上保安庁長官による挨拶

多国間での連携・協力

多国間での連携・協力
2 北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)

北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)は、北太平洋地域の6か国(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア、米国の海上保安機関)の代表が一堂に会し、北太平洋の海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について協議する多国間の枠組みであり、海上保安庁の提唱により、平成12年から開催されています。参加6か国の海上保安機関は、このフォーラムの枠組みのもと、現場レベルでの連携をより実践的なものとするための多国間多目的訓練(MMEX)等を行っています。また、今後の連携・協力の方向性やこれまでの活動の成果について議論するため、例年、長官級会合(サミット)と、実務者による専門家会合を開催しています。令和7年9月には、長官級会合が中国・上海において開催され、最近の密輸・密航の取締事例を含む情勢、最近の各国の捜索救助・海洋汚染事故対応及び「脱炭素化に向けたエネルギー源の海上輸送の防災対策」の動向等について情報交換を行い、引き続き、机上訓練や通信訓練等を通じ、参加国間で各分野における連携・協力を進めていくことで一致しました。

NPCGF長官級会合

NPCGF長官級会合

会合の様子

会合の様子

全体会合における海上保安庁の発表

全体会合における海上保安庁の発表

これまでのNPCGF開催国一覧

これまでのNPCGF開催国一覧
海上保安庁長官による挨拶

海上保安庁長官による挨拶

3 アジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)

アジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)は、海上保安機関の長官級が一堂に会して、アジアでの海上保安業務に関する地域的な連携強化を図ることを目的とした多国間の枠組みであり、海上保安庁の提唱により、平成16年から開催されています。令和7年10月に長官級会合がオーストラリア・シドニーで開催され、オブザーバーを含む26か国・1地域・2機関が参加し、「捜索救助」、「海洋環境保全」、「海上不法活動の予防・取締り」、「人材育成」及び「情報共有/合同訓練」の5つのワーキンググループにおいて意見交換を行い、引き続き、各分野における連携・協力を進めていくことで一致しました。

第21回アジア海上保安機関長官級会合(オーストラリア)

第21回アジア海上保安機関長官級会合(オーストラリア)

ミニラテラルの連携・協力

海上保安庁では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、これまで多国間・二国間の協力枠組みを推進してきました。

更なる国際連携・協力を推進するため、これまでの協力枠組みに加え、3か国程度の比較的小規模な協力枠組み(ミニラテラル)を発展させることで、インド太平洋地域の各国海上保安機関との連携・協力をより一層強化しています。

海上保安庁では、日米韓、日米比、日米豪印といったミニラテラルの協力枠組みを通じて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、海上保安分野における連携・協力の取組を進めています。

1 日米韓海上保安機関の連携

令和5年8月、米国で開催された日米韓首脳会合における共同声明「キャンプデービッドの精神」では、日米韓がASEAN及び太平洋島嶼国に対する地域的な能力構築について協調する計画であると言及され、日米韓海上保安機関は令和6年5月、サンフランシスコ(米国)において、連携にかかる意向確認書(Letter of intent)に署名しました。

この「キャンプデービッドの精神」に基づく実践的取組として、日米韓海上保安機関は、これまで合同訓練やASEAN及び太平洋島嶼国への能力向上支援等の活動を行ってきました。

直近の事例では、令和7年5月には、韓国海洋警察庁(KCG)が主催する捜索救助に関する日米韓海上保安機関による合同セミナー及び机上訓練に職員を派遣し、日米韓で海上捜索救助等に関する知識を共有し、連携強化を図るとともに、日米韓共同でASEANの海上保安機関職員に対する能力向上支援を行いました。

日米韓合同セミナー

日米韓合同セミナー

日米韓海上保安機関職員交流

日米韓海上保安機関職員交流

日米韓合同机上訓練

日米韓合同机上訓練

日米韓合同捜索救助訓練

日米韓合同捜索救助訓練

2 日米比海上保安機関の連携

令和6年4月の日米比首脳会合において、共同ビジョンステートメントが発表されました。その中で、日米比3か国の海上保安機関は、相互運用性を向上し、海洋安全を推進するため、インド太平洋において様々な海上活動を実施することが記載されています。

このステートメントに基づき、これまで日米比3か国の海上保安機関長官級会合や連携訓練等を実施してきました。また、令和7年6月、鹿児島県鹿児島湾において、共同ビジョンステートメント発表後『初』の日米比3か国による合同捜索救助訓練を実施しました。訓練には、米国沿岸警備隊(USCG)巡視船、フィリピン沿岸警備隊(PCG)巡視船、当庁巡視船及びヘリコプター等が参加し、三カ国の連携・協力体制の強化を図りました。

日米比合同捜索救助訓練

日米比合同捜索救助訓練

米比海上保安機関職員による十本部長表敬訪問

米比海上保安機関職員による十本部長表敬訪問

七ツ島運航支援センター見学

七ツ島運航支援センター見学

3 日米豪印海上保安機関の連携

日米豪印(QUAD)は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、幅広い分野で実践的な協力を進めており、海洋安保分野においては、地域の海洋状況把握(MDA)能力の向上を目指す「海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ(IPMDA)」に取り組んでいます。このIPMDAの取組に貢献するため、海上保安庁では、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)と連携し、インド太平洋地域におけるMDAの能力強化に関する技術支援プログラムの1つであるMDA研修に令和4年から職員を講師として派遣しています。

また、令和6年9月の日米豪印首脳会合の機会に発出された共同声明に基づき、令和7年6月から7月にかけて、初めて、「シップオブザーバー・ミッション」(※日米豪印の海上保安機関による相互乗船)が実施されました。本取組では、海上保安官2名が豪印の海上保安機関職員と共に、USCG巡視船「STRATTON(ストラトン)」に乗船し、パラオ共和国から米国・準州グアムまでの5日間の航海中に、USCG巡視船乗組員が行う各種業務や訓練に参加・見学するとともに、日米豪印間での知見の共有や様々な意見交換を行い、信頼醸成を図りました。

日米豪印シップオブザーバー・ミッション

日米豪印シップオブザーバー・ミッション

意見交換を行う日米豪印参加者

意見交換を行う日米豪印参加者

二国間での連携・協力
1 アメリカ

海上保安庁は米国沿岸警備隊(USCG)を模範として設立し、平成22年には「海上保安庁とUSCGとの間の協力覚書」を署名・交換しました。令和4年には、USCGとの間で協力覚書に係る付属文書を署名し、日米海上保安機関の連携をより一層密なものとするとともに、日米間の取組を「サファイア」と呼称することとなりました。この「サファイア」の一環として、日米海上保安機関合同訓練等を実施しています。令和7年5月には、米国サンフランシスコ沖合において、海上保安大学校練習船「いつくしま」がUSCG巡視艇・航空機と合同訓練を実施しました。また、令和7年11月には、米国・カリフォルニア州において海上保安庁の機動防除隊(NST)とUSCGにおける災害対応の専門部隊「ナショナル・ストライク・フォース(NSF)」との意見交換や両部隊間で初となる合同訓練を実施しました。

USCGとの合同訓練

USCGとの合同訓練

機動防除隊、NSF両部隊による合同訓練

機動防除隊、NSF両部隊による合同訓練

油防除合同訓練

油防除合同訓練

2 韓国

海上保安庁と韓国海洋警察庁(KCG)は、海域を接する両国間における海上の秩序の維持を図り、幅広い分野での相互理解・業務協力を推進するために、平成11年に長官及び庁長が署名した合意文書「日本国海上保安庁と大韓民国警察庁間の協力について」に基づき、定期的に日韓海上保安当局間長官級協議を開催しています。令和7年12月には21回目となる長官級協議を韓国・仁川において実施し、両当局間の連携・協力を図ることで一致しました。また、令和7年6月には第八管区海上保安本部と東海地方海洋警察庁が、双方の船艇等を用いた合同捜索救助訓練を実施しました。

第21回日韓長官級協議

第21回日韓長官級協議

3 インド

海上保安庁とインド沿岸警備隊(ICG)は、平成11年に発生した「アロンドラ・レインボー」号事件を契機に、平成12年以降定期的に長官級会合や連携訓練を実施しており、平成18年には「海上保安庁とインド沿岸警備隊との間の協力に関する覚書」を締結し、連携・協力関係の強化を継続しています。令和7年7月には、海上保安大学校練習船「いつくしま」がインド・チェンナイに入港し、ICGとの間で合同訓練を実施したほか、日印海上保安機関職員同士の交流を行いました。

また、令和8年1月には、日印海上保安長官級会合をインド・ニューデリーにおいて開催するとともに、インド・ムンバイにおいて、昨年に引き続き、海上保安庁の機動防除隊(NST)とICG職員が危険・有害物質(HNS)対応の連携訓練を実施し、技術の知識・技能の更なる共有を図りました。

第22回日印長官級会合

第22回日印長官級会合

両機関による危険・有害物質の連携訓練

両機関による危険・有害物質の連携訓練

日印連携訓練

日印連携訓練

4 ロシア

海上保安庁とロシア連邦保安庁国境警備局は、海上での密輸・密航等の不法活動の取締り等に関する相互協力のため、平成12年に署名した「日本国海上保安庁とロシア連邦国境警備庁(現ロシア連邦保安庁国境警備局)との間の協力の発展の基盤に関する覚書」に基づき、これまでに長官級会合、日露合同訓練等のほか、実務レベルにおいて必要な協力をしています。

5 べトナム

海上保安庁とベトナム海上警察(VCG)は、平成27年、海上保安分野に係る人材育成等について協力覚書を署名しました。令和7年11月には、VCGの巡視船の博多港入港や日越合同捜索救助訓練等を実施しました。また、これに併せて年次会合を実施し、今年の協力の振返り及び今後の支援の方向性等について確認しました。

ベトナム海上警察との年次会合

ベトナム海上警察との年次会合

6 インドネシア

海上保安庁とインドネシア海上保安機構(BAKAMLA)は、令和元年、両機関の連携強化を目的とした協力覚書を署名しました。令和7年10月に、インドネシアにおいて、年次会合を開催し、今年の協力の振り返り及び今後の支援の方向性等について確認しました。

インドネシア海上保安機構との年次会合

インドネシア海上保安機構との年次会合

7 フィリピン

海上保安庁とフィリピン沿岸警備隊(PCG)は、平成29年、両機関の連携・協力関係の強化を目的とした協力覚書を締結しました。令和5年には、海洋状況把握(MDA)に関する情報共有等に関する協力覚書の改定及び付属書への署名を行い、一層連携を深めています。令和7年4月には、フィリピンにおいてPCG長官と会談を行い、両機関の連携・協力について確認しました。

海上保安庁長官とPCG長官

海上保安庁長官とPCG長官

8 オーストラリア

海上保安庁とオーストラリア国境警備隊(ABF)は、平成30年、海上安全保障分野の協力に関する意図表明文書に署名し、同分野における人材育成等に関して連携を強化することに合意しました。令和5年には、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、MDAに関する相互の連携・協力を発展させるため、「海洋状況把握(MDA)に関する協力覚書」に署名しています。

海上保安庁長官とABF副長官

海上保安庁長官とABF副長官

今後の取組

海上保安庁は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強化のため、引き続き、多国間・ミニラテラル・二国間会合や合同訓練等を通じ、各国海上保安機関との連携・協力を推進していきます。