海上保安レポート 2026

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海と命を支える、新しい仲間を求めて


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海上交通の安全を守る

8 海をつなぐ


語句説明・索引

2 治安の確保 > CHAPTER V. テロ対策
2 治安の確保
CHAPTER V. テロ対策

世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、アジア諸国においてもISIL等によるテロが相次ぐなど、国際テロの脅威が継続しています。さらに、ドローンを使用したテロ等、新たなテロの脅威への対策も重要な課題となっています。

海上保安庁では、巡視船艇・航空機による監視警戒、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際等でのテロ対策に加え、海事関係者や事業者等に対して自主警備の強化を働きかけるとともに、不審事象の情報提供を依頼するなど、官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロの未然防止に万全を期していきます。

令和7年の現況

海上保安庁では、巡視船艇・航空機による原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設警戒のほか、旅客ターミナル・フェリー等のいわゆるソフトターゲットにも重点を置いた警戒を実施しています。

また、国際テロ等を未然に防止するために、人及び物の流れの拠点である港湾においてテロ対策をはじめとする保安対策の一層の強化を図っており、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に基づく通報のあった、外国からの入港船舶2,256隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。国際港湾においては、港湾危機管理官を中心に、警察、入管、税関、港湾管理者等の関係機関や港湾関係者と緊密に連携しながら、不審事案発生時に備えた合同訓練や港湾保安設備の合同点検等、間隙のない水際対策に取り組んでいます。

このほか、海上や臨海部において、皇室と国民との親和に配慮し、天皇皇后両陛下や皇族方の警衛を行うとともに、国内外の要人の警護及び国際会議等の行事に際して警備実施を行い、テロ等違法行為や不測の事態の未然防止に取り組んでいます。

関係機関との合同訓練

関係機関との合同訓練

新たな脅威への対応

近年、世界各国でドローンを用いたテロ事案等が発生しており、我が国においてもそのような新たなテロの脅威に対し、「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」等を適切に運用して未然防止を図っているところです。海上保安庁においては、関係機関と連携して不審なドローンの飛行に関する情報を把握するとともに、ドローン対策資機材を活用するなど、複合的な対策を講じています。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における海上警備への対応

大阪・関西万博は世界中の国や国際機関が参加した大規模イベントであり、その会場である夢洲は、周囲を海で囲まれ、開催期間中は国内外の要人を含む多数の方々が来場することから、周辺海域の警備や海上交通の安全確保が極めて重要でした。

海上保安庁では、約半年間にわたる開催期間中、巡視船艇・航空機などによる会場周辺海域の警備をはじめ、警察等の関係機関と連携したテロ対策を行いました。加えて、旅客船ターミナル等のソフトターゲットを標的としたテロ対策として、海事関係者や事業者等に対する自主警備の強化を要請するなど官民一体となって対応し、無事、海上警備を完遂しました。

万博会場と巡視船

万博会場と巡視船

官民一体となったテロ対策の推進

公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットを標的としたテロは、日常の身近なところで発生する可能性があるため、この対策には国民の皆様の理解と協力が不可欠です。

このため、海上保安庁では、官民が連携したテロ対策の推進に力を入れており、臨海部のソフトターゲットである旅客ターミナルやフェリー等の海事・港湾事業者等とともにテロ対策を進めています。

平成29年度から、官民が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、官民一体となってテロ対策について議論・検討しており、令和6年度においては、大阪・関西万博に向けて、「内航旅客船等におけるテロ対策マニュアル作成の手引き」を策定し、内航旅客船事業者に配布・指導を行うことで、自主警備強化を啓発しました。また、同協議会にて「テロ対策啓発用ポスター」や「テロ対策啓発用リーフレット」を作成し、各協議会メンバーで周知するなどして活用することで、大阪・関西万博の開催前から終了までの間における、さらなるテロ対策の強化策を図りました。

今後の取組

海上保安庁においては、今後もテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。

不審船・工作船対策

海上保安庁では、昭和23年の発足以来、これまで21隻の不審船・工作船を確認しています。これらの不審船・工作船は平成13年に発生した九州南西海域での工作船事件にみられるように、覚醒剤の運搬や工作員の不法出入国等の重大犯罪に関与している可能性が高く、我が国の治安を脅かすこれらの活動を未然に防止することは重要な課題です。

不審船の共同追跡・監視訓練

不審船の共同追跡・監視訓練


海上自衛隊との不審船対処に係る共同訓練の取組状況

不審船対処に係る共同訓練は、平成11年に策定した「不審船に係る共同対処マニュアル」に基づき、海上保安庁と海上自衛隊の共同対処能力の維持・向上を図ることを目的に実施しています。

令和7年度は、海上保安庁及び海上自衛隊の船舶・航空機による不審船対処に係る情報共有訓練、不審船の共同追跡・監視訓練、停船措置訓練を第二、七、九管区海上保安本部において実施しました。

海上自衛隊との不審船対処に係る共同訓練はこれまで32回実施しており、引き続き不審船対処に係る海上自衛隊との連携強化を図っていきます。

海上保安庁では、引き続き、各種訓練を通じて事案対処能力の維持・向上に努めるとともに、関係機関等との連携を一層強化することで不審船・工作船に対して厳格に対処していきます。