海上保安レポート 2026

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海と命を支える、新しい仲間を求めて


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海上交通の安全を守る

8 海をつなぐ


語句説明・索引

5 災害に備える > CHAPTER I. 事故災害対策
5 災害に備える
CHAPTER I. 事故災害対策

ひとたび船舶の火災、衝突、沈没等の事故が発生すると、人命、財産が脅かされるだけでなく、事故に伴って油や危険・有害物質が海に排出されることにより、自然環境や付近住民の生活にも甚大な悪影響を及ぼします。

海上保安庁では、事故災害の未然防止に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して、迅速に対処し、被害が最小限になるよう取り組んでいます。

令和7年の現況
事故災害への対応
船舶火災

令和7年に発生した船舶火災隻数は70隻であり、船舶の種類別で見ると、漁船が26隻で最も多く、全体の約4割を占めています。

このような船舶火災に対して、海上保安庁では、消防機能を有する巡視船艇等による消火活動を実施しています。

船舶火災隻数の推移

船舶火災隻数の推移
油等排出事故

海上における油等の排出事故では、原因者による防除が原則であるため、海上保安庁では、原因者に対する指導・助言を行っています。

一方、油等の排出が大規模である場合や、原因者の対応が不十分な場合には、関係機関と協力のうえ、海上保安庁も巡視船艇・航空機を投入して自ら防除を行うほか、必要に応じて海上防災のスペシャリストである機動防除隊を派遣して対応にあたっています。

令和7年に海上保安庁が防除措置を講じた油排出事故件数は135件でした。

海上保安庁が防除措置を講じた油排出事故件数

海上保安庁が防除措置を講じた油排出事故件数
事故災害対処のための体制強化
1 油排出事故等への備え

海上保安庁では、事故災害に対して、より迅速かつ的確な対応を行うための体制の整備を続けており、対応にあたる海上保安官に対して、海上火災や油等の排出事故への対応等に備えた研修・訓練を実施しています。

また、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」に基づく関係省庁連絡会議の枠組みにおいて、情報共有等を図っているほか、令和7年12月に油等の排出事故等に備えた図上訓練を実施し、対応体制を確認するなど、関係省庁間の連携強化を図っています。

また、海上に排出された油等の防除等を的確に行うためには、排出された油等がどのように流れるかを予測することが重要であることから、海上保安庁では、測量船等の船舶、自律型海洋観測装置(AOV)及びイリジウム漂流ブイで観測した海流等のデータや気象庁から得た気象のデータを基に油等が漂流する方向、速度等を予測する漂流予測に取り組んでいます。

このほか、大規模な油流出事故が発生した際、関係機関が油防除措置等を的確に実施するために必要とされる全国の沿岸域の地理・社会・自然・防災情報等について、「海洋状況表示システム(海しる)」で公開しています。

● 海洋状況表示システム(海しる) https://www.msil.go.jp/
QRコード
油回収訓練

油回収訓練

消防訓練

消防訓練

2 国内連携

事故災害を防止し、また、被害を最小限に食い止めるためには、事業者をはじめとする関係者に対し、事故防止の意識を高めてもらうことや、地方公共団体等の関係機関との連携が重要です。

海上保安庁では、タンカー等の危険物積載船の乗組員や危険物荷役業者等を対象とした訪船指導をはじめ、運航管理者等に対する事故対応訓練や、大型タンカーバースの点検等を実施しています。

また、地方公共団体、漁業協同組合、港湾関係者等で構成された協議会を全国各地に設置し、合同訓練や講習会などを通じて、事故災害発生時に迅速かつ的確な対応ができるよう、連携強化に努めています。

第10回インド国家油汚染対応訓練(NATPOLREX)での講演の様子

第10回インド国家油汚染対応訓練(NATPOLREX)での講演の様子

油防除対応訓練における資機材取扱説明

油防除対応訓練における資機材取扱説明

3 国際連携

油等による海洋環境汚染は、国境を越え、甚大な影響や被害を及ぼす可能性もあることから、各国と連携した対応が重要です。このため、海上保安庁では、各国関係機関との合同訓練の実施や国際海事機関(IMO)の関係委員会への参加など、国際的な取組に貢献するとともに、研修・訓練などを通じて、これまで培ってきた海上災害への対応に関するノウハウを各国関係機関に伝えることで、海上防災体制の構築を支援しています。

令和7年10月には、インド・チェンナイにおいて開催された第10回インド国家油汚染対応訓練(NATPOLREX)への招待を受けて機動防除隊等3名を派遣し、事案対応や訓練に関する講演を行いました。

また、令和7年10月28日から約40日間、独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みの下、13か国(ジブチ、タンザニア、マダガスカル、パラオ、ソロモン、ツバル、サモア、マーシャル、スリランカ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア)の海上保安機関職員16名に対し、油防除対応者向けの研修を実施しました。

今後の取組

海上保安庁では、引き続き、巡視船艇・航空機等や防災資機材の整備、職員の研修・訓練を通じ、事故災害への対処能力強化を推進するとともに、関係者への適切な指導・助言、国内外の関係機関との連携強化を通じて、事故災害の未然防止や事故災害発生時の迅速かつ的確な対応に努めます。

また、新たな課題として、代替エネルギーとして期待されている水素・アンモニア等の次世代エネルギーの運搬船等に関連した事故にも的確に対応するため、必要な対応資機材の整備を進め、職員の知識・技術の向上を図ることで、海上防災体制の構築に努めていきます。