海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(以下海防法といいます)では、油とは原油・重油・潤滑油・軽油・灯油・揮発油その他の国土交通省令で定める油及びこれらの油を含む油性混合物と定められており、海上保安庁では、海上に浮流している油や海岸に漂着した油を採取し、赤外分光光度計、ガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフなどの分析装置を駆使して油種を特定します。
また、油の排出源について、浮流油が発見された海域を通過した船舶等から提出を受けた油類の成分分析を行い、海上浮流油や海岸漂着油の分析結果を基に、その類似性を判定しています。 |
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| 赤外分光光度計 |
物質に赤外線を照射すると、ある波長の光が選択的に吸収を受けます。この吸収される量を各波長毎に測定し、物質を透過した赤外線の強さを縦軸に、波長を横軸にとって記録すると図のような赤外線吸収スペクトルが得られます。(現在では横軸に波長の逆数である波数をとるのが一般的です)この赤外線吸収スペクトルは、人間の指紋と同じようにその物質固有のものであるので、その物質が何であるかを知るために非常に有効に利用することが出来ます。また、物質を形作っている各部の部分構造に関する赤外線吸収はどの波数領域で起こるかがあらかじめ知られているので、このスペクトルから未知の物質の化学構造を得ることが出来るのです。赤外分光光度計はこの原理を応用して、分析試料がパラフィン系炭化水素か否かを確認します。すなわち、パラフィン系炭化水素であれば、海防法に定められる油に該当すると考えられるのです。
また、この装置では、自動車ガソリン、航空ガソリン、ナフサ、航空タービン燃料などの軽質油に対しては、油種の特定及び異なる試料の類似性の判定にも利用することが出来ます。
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| ガスクロマトグラフ |
クロマトグラフィーは、分離すべき成分を大きな表面積を持つ多孔性の固定相と、この相を透過する移動相との間に分配させる物理的分離法の一つであって、非常に分離効率がよく、混合物の分析手段としてのみならず、特定成分を単離する手段としても活用されています。移動相が気体または蒸気の場合をガスクロマトグラフィーといい、このために用いる装置がガスクロマトグラフです。
ガスクロマトグラフ分析法は、気体試料、気化した液体試料または固体試料をキャリアー(試料を運ぶ)ガスによって、直径0.5ミリ以下長さ数十メートルの毛細管(キャピラリー)カラム内で展開させ、気体の状態で通過させて各成分に分離する方法です。
海上保安庁ではこの分析法を主として油分析に使用し、油の主成分である炭化水素がカラムに吸着する時間差(メタン、エタン、プロパンなど炭素数の小さいものから順に分離されます)を利用して、カラムから出てきた炭化水素の有機成分を逐次燃焼させてイオン化し、これを水素イオン炎検出器で検出して油中の有機成分を電圧に変換させ、この電圧をピーク群として図のように表示させます。
このピークのパターンは油の成分によって違うので、これを比較することによって異なる油試料の類似性の判定に利用します。
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| 高速液体クロマトグラフ |
クロマトグラフィーの中で、移動相として液体を用いるものを液体クロマトグラフィーと呼びます。そして、これを自動的に行わせしめる装置が液体クロマトグラフで、なかでも、移動相を高圧で送り、分離時間を短縮したものを高速液体クロマトグラフと呼んでいます。
この装置は、送液部・分離部・検出部の3主要部から成り立っており、ゲル浸透クロマトグラフ用カラムを装着させて作動させ、油試料を注入すると、分子ふるい効果のために分子量に従って分離溶出されます。この溶出物をマルチチャンネル検出器で測定し分子量の分布を図のように表示させます。
分子量分布は油種によって異なるので、ピーク形状やピークの位置を比較することによって異なる油試料の類似性を判断します。
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