発表日
令和8年10月30日
概要
海上保安庁は、今年11月25日から翌年3月23日にかけて、第68次南極地域観測隊員として海上保安官1名を派遣し、南極周辺の海図の整備を目的とした海底地形調査及び潮汐観測を行います。また、他機関と協力しながら、南極で初となる人工衛星レーザー測距(SLR)観測の支援任務にあたります。
本文
海上保安庁では、船舶の航行安全のため、南極地域の海図を刊行しています※。刊行している海図をアップデートするため、毎年、南極地域観測隊員として海上保安官を派遣しており、南極周辺の海底地形調査をはじめ、水温観測や潮汐観測を行っています(図1、図2、図3)。今回は潮汐観測を行う機器(水位計)を更新する作業も行う予定です(図3)。
※南極地域周辺の海図は、国際水路機関(IHO)のメンバー国が分担して刊行することとなっており、日本(海上保安庁)は昭和基地周辺の海図を刊行しています。
当庁からは、第68次南極地域観測隊員として、
豊鷲見 淳史(とよずみ あつし)(海洋情報部沿岸調査課 沿岸調査官)
を派遣します。豊鷲見隊員は、12月1日にフリーマントル(豪国)で南極観測船「しらせ」に乗船し、約4カ月観測に従事したのち、翌年3月23日に帰国する予定です。
また、今回は海上保安庁で行う観測に加えて、一橋大学らのグループ(代表:大坪俊通教授)が行う、南極では世界初となる人工衛星レーザー測距(SLR)観測に協力します。SLR観測は、レーザーを人工衛星(反射鏡搭載)に向けて照射し、レーザーが反射して戻ってくるまでの往復時間を高精度に計測し、人工衛星との距離を測る観測です(図4)。
南極でのSLR観測は、ほぼ日が沈まない状況で、人工衛星の発見と追尾を行うため、レーザー送信部及び受信部の光軸整合調整、太陽光由来のノイズの除去などの技術的課題があり、通常より難易度の高いものとなります。また、南極にはSLR観測局がなく、観測網の空白域にあたり、得られたデータは、地球上の位置の基準となる世界測地系の維持等に役立てられます。
海上保安庁は、和歌山県の下里水路観測所において、1982年から40年以上にわたりSLR観測を行ってきました。今回派遣する観測隊員は同観測所での勤務経験があり、その経験を活かして、南極でのSLR観測に協力していきます。

海底地形調査イメージ

船内の機器操作
図1 海底地形調査の様子

水中音速度測定のための水温観測

音速度によって補正された海底地形のデータ
図2 音速度測定の様子

潮汐観測

海底へ水位計を設置
図3 潮汐観測の様子(南極・昭和基地周辺)

人工衛星レーザー測距観測の様子

レーザー測距観測模式図
図4 SLR観測の様子