密航対策

 我が国には、いわゆるオーバーステイといわれる不法残留外国人が約23万人いるといわれています。また、これらの者以外に不法な手段で入国し、在留しているいわゆる密航者と呼ばれる外国人が相当多数いると考えられています。近年増加している外国人による犯罪は、密航者を含む不法滞在者がその温床になっているともいわれ、我が国の治安維持等の観点から問題となっています。

 このため私たちは海上ルートによる不法入国事犯の摘発に努めています。

集団密航事件の摘発
集団密航事件の摘発


1 不法入国事犯の現状

 平成12年に海上保安庁が摘発した密入国事件は13件で、29名の密航者、26名の密航手引者を検挙しました。平成13年は6月末までに、9件を摘発し、89名の密航者、19名の手引者を検挙しており、半年間で、既に昨年を上回る密航者を検挙しています。

 平成12年から平成13年6月までに海上保安庁が検挙した密航者118名のうち100名は中国人であり、依然として中国からの密航者が高い割合を占めています。

不法入国者国籍別検挙人数

2 不法入国の手口の多様化

 高水準で推移していた不法入国事犯は、平成11年後半から一時的に減少傾向にありましたが、平成12年後半から再び増加傾向にあります。平成13年に入ってからは、正規の貿易船を利用し、少人数でコンテナに潜伏して密航を企てる事犯が多発しており、平成13年1月から6月までの間に発生した船舶利用集団密航事件のうち、コンテナに潜伏した密航事犯は件数で45%、検挙人数で約37%を占めています。この他、船内に巧妙に設置された隠し部屋に潜伏してくるものも後を絶ちません。また、平成12年は1件も認められなかった密航専用に仕立てた船舶を利用した大量集団密航事犯や本邦沖合で外国船等から小型の船に乗り換えて来る密航事犯が再び発生するなど、密航の手口は、巧妙化、多様化の度合いを強めています。

平成13年 密航者方法別検挙人数
密航に使用されたコンテナ(内部は飲料水のペットボトルなど生活用品が散乱していた。)

3 不法入国者摘発への取組み

 密航専用に仕立てた船舶による密入国は一度に大勢の密航者を運べるため、密航請負組織の儲けが多い反面、発見される可能性も高くなります。このため、最近ではコンテナ等を使用した小規模で発見されにくい方法による密航が主流となりつつあります。これは密航の成功率が高い、すなわち密航費用の回収率が高い方法に変化してきたためと考えられます。

 このように小規模化、巧妙化かつ多様化する密航事犯に対しては、いかにして確度の高い情報を事前に入手するかが今、大きな課題となっています。

 これらの課題を克服するため、私たちは、国内外関係機関との連携等により情報収集、分析能力を強化するとともに、船艇・航空機の機動力を活用し摘発体制の強化を図っていきます。

海上保安最前線 捜査編
[写真]

「来週の月曜、中国人15,6人を乗せた船が入る。船の名前にはMという字がある。」

「もしもし、お名前と連絡先を……」

「プツン!」

 明らかに外国人からと思われる電話は、何かを恐れるようにすぐに切れる。情報の真偽は定かではない。しかし、このような通報がある限り、見過ごす訳にはいかない。

 早速、T港に入港する船舶の中から該当船の割り出しを行い、T港周辺港湾を管轄する警察等の関係機関へも通報し、張り込みの態勢を敷く。様々な観点から該当船を絞り込むが、情報提供は一度限りで、情報が足りない。「上陸される前にすべて潰していくしかないな」。朝一番で港に着岸する船は、通常深夜に港外に到着し、錨泊する。夜陰に乗じてボートなどで上陸されないとも限らない。昼夜を問わない巡視船艇による集中した立入検査が続く。税関、警察との合同サーチも頻度を増す。

 貨物船を合同サーチ中の海上保安官が、船底付近で不審なマンホールを発見。隠し部屋だ。

「密航者発見、中国人らしき者十数名。」

 点が線につながった達成感、安堵感もつかの間、密航者の逮捕、現場検証、逮捕被疑者の引致、留置施設への押送、広報準備等、慌ただしくなる保安部。同時に密航者を運搬した船員も厳しく追及しなければならない。また、全国から国際捜査官を派遣してもらわなければならない。密航者を48時間以内で検察庁へ送致するための捜査に加え、手引きした船員を追及する捜査が始まる。時間との勝負。送致した後も背後でこれらの者を操る密航組織等、全容解明のため、線から面への緻密な捜査の毎日が少なくともこれから1ヶ月は続く…。


戻る 次へ
インデックスページへ