薬物・銃器の密輸対策

 私たちは、我が国の社会の安全・安定を根本から揺るがす薬物乱用の増加や銃器の一般社会への浸透を防ぐため、海上ルートによる薬物・銃器の密輸事犯の摘発に努めています。これらは、いったん陸上に入り込むと摘発が困難になりますので、水際阻止が特に重要です。


1)平成12年の摘発状況

 平成12年は、海上保安庁の関与した事件での覚せい剤の押収量が490.0kgと過去2番目を記録し、過去最高の785.5kgを記録した平成11年に引き続き高い数字となっています。また、けん銃等銃砲については106丁、実包1,131発を押収しました。

 平成12年における事犯の特徴としては、薬物は、相変わらず100kgを超える大量覚せい剤押収事犯が続発したこと、島根県温泉津港や沖縄県宮古島といったひとけの少ない地方港等を陸揚地として利用した事犯が発生したことが挙げられます。

 また、銃器については、密輸入にヨットを利用した新たな形態の事犯の発生が挙げられます。

薬物事犯の摘発状況

銃器事犯の摘発状況

覚醒剤の押収量

2)相当量の覚せい剤が、海上ルートにより本邦に流入

 薬物・銃器の問題のうち、覚せい剤については、若年層への拡がりを見せる等、「第3次覚せい剤乱用期」を迎え、我が国において最も深刻な問題となっています。平成12年に我が国で押収した覚せい剤(1回の押収量が、1kg以上の事犯に限る。)をルート別で見ると、76%が船舶を使用した海上ルートによるものです。

 また、これまでに国内で行われた調査結果によると、我が国への覚せい剤の流入量は数トンから十数トンと推定され、この結果からも押収量をはるかに超える相当量の覚せい剤が国内に流入していると推定されます。

平成12年度に押収した覚せい剤から見たルート別割合

3)国内外の関係取締機関との連携強化

 私たちは、薬物・銃器の水際阻止をより効果的に行うため、警察、税関等の関係取締機関と入港船舶への合同立入検査の実施や密輸情報の交換等を積極的に実施しています。

 また、我が国の近隣諸国である韓国、中国及びロシアの関係取締機関と情報交換のための連絡窓口の設定や関係国の取締技術の向上等に努めています。


JICA短期専門家として、フィリピンにおける海上薬物取締セミナーで講義する海上保安官

4)密輸事犯の摘発件数の向上を目指す

 私たちは、密輸事犯の摘発件数の向上を目指し、各種対策に取り組んでいますが、最近の密輸事犯は、覚せい剤等をコンテナ等の貨物内に隠匿するなど、洋上において監視するのみでは、発見が不可能な巧妙な手口により敢行されています。

 このような状況の中、私たちが、今後密輸事犯の摘発水準を向上させるためには、密輸事犯に関する情報収集の強化を図ることが最も重要です。

 私たちが、これらの情報を入手し、関係取締機関と連携しながら、巡視船艇・航空機の機動力を活用した取締りを推進することで、国内への薬物・銃器の流入を防ぐことができるものと考えています。

[写真]

 過去最高のけん銃押収量の影には海上保安官の地道な努力があったので、これを皆さんに紹介します。

 平成12年9月22日、石垣海上保安部は、石垣島御神埼沖において、ヨット「Y号」(7.3トン)によるけん銃等密輸入事件を摘発し、けん銃86丁、実包1,107発を押収するとともに、「Y号」でけん銃等を運んできた日本人2名を逮捕しました。

 この事件は、1回の押収量としては、海上保安庁が関与した事件の中で、過去最高のものでした。

 その後、沖縄県警及び沖縄地区税関と合同捜査を進め、新たに国内の関係者1名を逮捕し、これら関係者は那覇地検検察官により起訴されました。

 事件の発端は、平成12年3月、石垣海上保安部所属巡視艇に乗り組む海上保安官が、石垣港内に係留中であった「Y号」の立入検査を行った際に、実際の所有者が書類上の所有者と異なっていたこと、購入目的がはっきりしないことなどを不審に思い、以後、要注意船としてその動静に注意したことにはじまります。

 平成12年8月、「Y号」は西表島の西方において漂流中のところを地元漁船に救助されたことから、海難調査を行ったところ、何らかの密輸を企てようとして遭難した疑いが強まりました。

 このような中、石垣海上保安部は、「Y号」がフィリピンに渡航するための手続きを行っているとの情報を入手しました。更に、台風の影響で時化模様の9月14日、「Y号」が石垣港を出港したことから、巡視船艇、航空機により「Y号」の入港を待ち受ていたところ、9月22日、警戒中の巡視船が石垣島御神埼の海岸付近でゴムボートを曳航している「Y号」を発見しました。

 立入検査を行うため接近すると、「Y号」は逃走を開始し、曳航されていたゴムボートに乗船していた男がけん銃等を海中に投棄しましたが、潜水士によりけん銃等の全てを海底から回収するとともに関係者2名を逮捕しました。

 この事件は、現在公判中ですが、このように海上保安官が不審な点を見逃さず、地道な活動を続けたことにより、過去最大量のけん銃を押収することができたのです。


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