第5章 海洋環境の保全と海上防災


T 海洋汚染の現状と防止対策


1 海洋汚染の現状

 (1) 海洋汚染発生の確認状況

 海上保安庁が11年に我が国周辺海域において確認した、油、廃棄物、工場排水などによる海洋汚染の発生件数は589件であり、昭和48年に統計を取り始めて以来、最小の件数となった。(第2−5−1図参照)。

第2−5−1図 海洋汚染の発生確認件数の推移

 11年に確認した海洋汚染の態様は、次のとおりである。 

 ア 油による汚染は339件で、全体の約58%を占めており、これ を海域別にみると、瀬戸内海、本州南岸、東京湾等で多く確認されている(第2−5−2図参照)。

第2−5−2図 海洋汚染の海域別発生確認件数(11年)

 排出源は、船舶からのものが約76%を占め、排出源不明のものも、発見場所や浮流状態から見て、そのほとんどが船舶からのものであると推定される。

 また、船舶からの排出と確認された257件の原因は、故意及び取扱不注意といった人為的なものが約62%である(第2−5−3図参照)。

第2−5−3図 油による海洋汚染の排出源別・原因別発生確認件数

 イ 廃棄物、有害液体物質、工場排水等による汚染は224件で、全体の38%を占めている。その内訳は、廃棄物180件、有害液体物質21件、工場排水等23件となっており、その原因のほとんどが故意によるものである(第2−5−4図参照)。

第2−5−4図 油以外による海洋汚染の排出源別・原因別発生確認件数

 ウ 赤潮は26件で全体の4%を占めており、東京湾において多く確認されている。

 (2) 海洋環境保全のための調査

 海上保安庁では、海水、海底堆積物、廃油ボールの漂流・漂着状況、海上漂流物調査等様々な調査を実施し、海洋汚染に係るバックグラウンドデータの収集を行っている。

   @ 海洋環境状況把握のための調査

 地球温暖化は、各種の地球環境問題の中でも特に深刻な影響を人類社会や生態系に与えるものと懸念されている。

 地球表面の約7割を占める海洋は、温暖化に対して多大な影響を及ぼしていると考えられているため、その機構を解明する必要がある。

 海上保安庁では昭和58年から、ユネスコ・政府間海洋学委員会(IOC)の決定に基づき、日本、米国、オーストラリア等太平洋沿岸各国が実施している西太平洋海域共同調査(WESTPAC)に参加し、本州南方から赤道域において測量船による水温、塩分、海流、波浪及び海洋汚染の定常モニタリング観測等を実施している。

 また、9年度から、3か年計画による北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究に参加し、北太平洋亜寒帯域における海洋構造とその変動及び海水・洋上大気中の二酸化炭素含有量等を把握するため、漂流ブイを用いた表層海流の観測及び北緯47度線に沿った観測線上の海洋観測を実施した。さらに12年度からは第U期として、漂流ブイを用いた表層循環変動に関する観測研究及び表層二酸化炭素分圧と物質循環に関する研究を行う。

 また、国際学術連合会議(ICSU)の中に設置された、南極研究科学委員会(SCAR)の調整のもとに実施されている日本南極地域観測では、南極海の海洋構造を把握するための海洋定常観測及び漂流ブイの追跡調査を実施している。

 さらに、ミレニアムプロジェクトの一つである「高度海洋監視システム(アルゴ計画)の構築」に参加し、海洋短波レーダー等の整備を行い黒潮の流況把握等、我が国周辺海域の海洋変動観測を強化することによって、海上活動の安全確保、海洋環境の保全につながる海洋変動モデルの構築とともに全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視把握するシステムの構築を推進する。

 さらに、地球温暖化に伴って生じるとされている海面上昇の実態把握等のため、海上保安庁が保有する全国29か所の験潮所及び南極昭和基地において潮位観測を行っているほか、8年度からは海洋測地基準点(石垣島ほか3か所)と至近験潮所の高さを人工衛星測地技術で比較することにより、地球重心からの海面の高さの絶対値を年1か所ずつ求めることとしている。

 日本海洋データセンター(JODC)は5年7月に日米包括経済協議のコモン・アジェンダの一つとして取り上げられた「地球観測情報
ネットワーク(GOIN)」及び地球温暖化問題に関する調査研究に参画し、海洋データ・情報の迅速な流通に貢献している。

   A 海水・海底堆積物の汚染調査

 海洋汚染の防止及び海洋環境の保全のための科学的調査として、昭和47年以後、我が国周辺海域、閉鎖性の高い海域及び海洋汚染防止法で定められた廃棄物排出海域(A海域)において、海水・海底堆積物の調査を定期的に実施している。

 最近の調査結果によれば、海水中の油分については、いずれの海域においても低い濃度レベルで推移しており、また、重金属については、天然の濃度レベルの範囲にあった。海底堆積物中の油分及び重金属等については、内湾域の湾奥部でやや高い濃度が見られた。また、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いも注目されているPCBについては、一部内湾域の湾奥部でやや高い濃度が見られた。

 さらに、従来から我が国周辺海域等における海水及び海底土中の放射能調査を実施しており、これまでの調査結果では、特に放射能汚染は認められていない。

海水・海底堆積物の汚染調査 海底堆積物の採取

   B 廃油ボールの漂流・漂着状況の調査

 海上保安庁は、廃油ボールの実態を把握するため、油、重金属等による海洋汚染を世界的に常時監視するための海洋汚染モニタリング計画(MARPOLMON)の一環として、国際的に統一された観測手法に基づき定期的に我が国周辺海域及び沿岸部における廃油ボールの漂流・漂着状況について調査している。

 11年の廃油ボール漂流・漂着状況調査によれば、漂流廃油ボールの採取量は増加傾向にあり、そのほとんどが本州南岸で採取されている。また、漂着廃油ボールについても増加傾向にあり、南西諸島で多く採取されている(第2−5−5図参照)。

第2−5−5図 日本周辺における廃油ボールの漂流・漂着調査結果(11年)

   C 海上漂流物の実態調査

 近年、海洋におけるビニール類、発泡スチロール、漁具等による海洋生物への被害等海上漂流物による海洋汚染の問題が世界的にも関心を集めていることから、海上保安庁ではこの実態を把握するため、3年以降、我が国周辺海域の15定線において定期的に巡視船による目視調査を実施している。

 11年の海上漂流物の実態調査によれば、調査距離数4,265海里において目視総数3,900個を数えており、10海里当たの平均目視固体数は 9.14個と前年より約19%減少している。また、そのうちビニール類、発泡スチロール等の石油化学製品は全体の約54%(昨年約85%)を占めていた(第2−5−6図参照)。

第2−5−6図 日本周辺における海上漂流物目視調査結果(11年)

<日本海沿岸に大量のポリ容器が漂着>

 12年3月9日、山口県阿武町の海岸に多数のポリ容器の漂着が確認された。それ以降4月30日までに、北海道から長崎県にかけての日本海沿岸に総数38,161個のポリ容器が漂着していることが確認された。容器の表面にはハングル文字等が記載されているものや韓国製表示のあるものが大部分で、内容物についてはほとんどが空であるが、分析の結果、一部に強酸性液体入り容器も確認されている。このため、本邦各港に入港した船舶から情報収集を行うとともに、外交ルート等により韓国に対しても関連情報の収集等を依頼しているが、現在のところ有力情報は得られておらず、引き続き調査を行っている。

2 海洋環境の汚染防止対策

 (1) 海洋環境の保全指導

   @ 海洋環境保全思想の普及・啓発

 海洋汚染の大半は不注意による油の排出、故意による廃棄物の投棄等の人為的要因により発生しており、海洋環境保全の重要性に対する認識が未だ十分であるとはいえない状況にある。また、今日では、事業活動を原因とする環境問題だけではなく、海岸に散在する空き缶やビニール袋が水辺環境を悪化させているように、国民の一般生活に伴い発生する環境負荷の集積によって生ずる環境問題に対しても対応していく必要がある。

 このため、海上保安庁では、海事・漁業関係者はもとより広く一般市民をも対象とした海洋環境保全思想の普及・啓発活動に力を入れており、全国各地で海洋環境保全講習会(11年においては725か所計50,076名)を開催し、海洋環境保全の重要性を呼びかけている。特に、海事・漁業関係者に対しては、油、有害液体物質等の排出事故防止や、ビルジ等の適正処理等に関する指導を、海上保安官が直接船に訪問して実施している(以下「訪船指導」と言う。)。また、一般市民に対しては、公共施設、各種イベント会場に海洋環境保全コーナーを設置し、海洋環境保全思想の普及・啓発に資する資料を展示したり、パンフレット等を配布することにより、海洋環境保全の重要性に関する理解を求めている。

 また、6月及び11月に「海洋環境保全推進週間」を設けて、集中的な活動を行っている。11年には、この期間中、3,554隻を訪船指導するとともに、306か所において海洋環境保全講習会を開催した。特に6月5日の「環境の日」には、主として一般市民を対象としたイベントを全国的に展開した。

 海洋環境保全思想の普及・啓発活動は、次世代を担う青少年に対して実施するのが効果的であることから、あらゆる機会を通じて積極的に取り組んでいくこととしている。

   A 他機関への支援

 (社)日本海難防止協会及び(財)海上保安協会共催により、主として海事・漁業関係者を対象に実施されている「海洋汚染防止講習会」に対して、海上保安庁では、講師派遣等の協力を行っている。

 また、8年度から(財)海上保安協会の事業として「海洋環境保全に関する推進」事業が実施されており、全国に配置されたボランティアである統括海洋環境保全推進員(11名)及び海洋環境保全推進員(570名)が、地方公共団体・企業等が行う海洋環境保全関連行事及び地域ボランティア活動等に積極的に参画するとともに、各地区における一般市民等への海洋環境保全思想の普及・啓発活動等を行っている。海上保安庁では、同事業に対して積極的な支援を行っている。

 (2) 海洋環境保全のための監視取締り

   @ 監視取締りの状況

 海上保安庁の重点取締り対象は、

 ・廃船、廃棄物の不法投棄
 ・船舶からの油、有害液体物質の不法排出
 ・臨海工場からの汚水の不法排出

であり、特に船舶、廃棄物の不法投棄を最重点取締り対象としている。

 海上保安庁では、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の船舶がふくそうする海域、タンカールート等、海洋汚染の発生する可能性の高い海域に巡視船艇・航空機を効果的に配備し、監視取締りを実施するとともに、外国船舶による油の不法排出事犯が度々発生している排他的経済水域においても監視取締りを強化し、違反船舶の早期発見に努めている。また、海空からの監視が行いにくい臨海工場からの汚水の不法排出事犯、廃棄物の不法投棄事犯に対しては陸上から監視取締り体制を強化している。さらに、船舶の不法投棄事犯に関しては、複数の船舶が広範囲に投棄されていることが多いことから、航空機による調査によりその状況を明らかにして事後の捜査に役立てる等、海陸空一体となった効果的な監視取締りを行っている。

 11年における海上環境関係法令違反の送致件数は765件で、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(以下「海洋汚染防止法」と言う。)違反が485件と大部分を占めており、次いで廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」と言う。)違反が186件、港則法違反が78件となっている。このうち海洋汚染防止法違反では、船舶からの油、有害液体物質の不法排出事犯及び船舶の不法投棄事犯、廃掃法違反では陸上からの廃棄物の不法投棄事犯が主なものであった。

 毎年6月及び11月には、期間を定めた海上環境事犯一斉取締りを行っているが、海上環境事犯は、監視取締りが厳しくなるに従い、その目を逃れるため手口がますます巧妙となる傾向が見られる。その例として、船舶からの油の不法排出事犯では、油の不法排出を隠蔽するために、不法排出用のパイプを外観上はわからないように増設していたもの、廃船の不法投棄事犯では、投棄した船舶の船名、船舶検査済票の番号等、船舶所有者を特定するための手掛かりを削り取る等したもの、廃棄物の不法投棄事犯では、埋立に見せかけて建設廃材等を投棄していたもの、汚水の不法排出事犯では過小に排出水の量を届け出て、法の規制を免れようとしたものや、秘密裏に設置した排出管から直接汚水を海域に垂れ流していたものなどが挙げられる。

 今後も監視取締りを一層強化するとともに、資器材の整備等により、監視取締り体制の充実を図っていく必要がある。

 また、12年1月、ダイオキシン類対策特別措置法施行に伴い、従来から実施している監視取締りに加え、今後は内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いも注目されているダイオキシン類の監視取締りにも取り組んでいくこととしている。

   A 船舶・廃棄物の不法投棄事犯への対応

    ア 船舶の不法投棄事犯への対応

 海上保安庁が、11年に確認した投棄船舶は、1,818隻で、前年に比べ307隻増加し、昭和61年以降最高の隻数となっている。このうち1,098隻がFRP船舶であり、年々増加する傾向にあることから、これらFRP船舶の処理方法を巡る問題が顕在化している。

 船舶を不法投棄する動機は、主に、処理費用が高額であること、また、自動車のような適正処理体制が確立されておらず、自ら船舶を処分しようとしても容易に処理することができないことから生じている。また、投棄に至る経緯としては、経済的に管理が困難となった船舶を放置し、やがて不法投棄するといったケースが多い。不法投棄された船舶は水没し、油が流れるなど、周辺の水辺環境を悪化させている。

 このような状況に対し海上保安庁では、船舶の不法投棄対策を海洋環境保全対策の重要課題として捉え、7年度から、その外観からして投棄された可能性のある船舶に対し、不要となった船舶の早期適正処理を指導する内容等を記載した「廃船指導票(オレンジシール)」を当該船舶に貼付することにより、所有者による自主的な処分等を推進するとともに、一定期間を経過しても処分等がなされないものについては、所有者を特定のうえ個別に指導し、悪質な事案については検挙する方針で対応している。

 このような取り組みにより、11年においては、1,208隻の不法投棄船舶が投棄現場から撤去され、水辺環境を改善することができた。しかし、船舶を適正かつ廉価に処理するシステムがあれば、更に多くの投棄船舶が撤去され、水辺環境が更に改善されることが期待できる。

 そこで、海上保安庁では、海上保安庁単独での取り組みには限界があるとの認識のもと、協議の場を通じてそれぞれの地域に適した船舶の処理体制の確立を、関係省庁、関係自治体等に働きかけている(第2−5−7図参照)。

第2−5−7図 投棄船舶の確認状況

<東京都廃船処理協議会の設立>

 近年、東京港において、放置若しくは投棄されたものと思料される船舶が増加し、水辺環境が悪化していることから、その増加を防止し、美しい水辺環境を取り戻す必要があった。そこで、東京海上保安部は、東京都等関係機関と連携して問題解決に取り組むために、協議会の設立を働きかけ、11年6月21日、「東京都廃船処理協議会」が設立された。同協議会では、港内の廃船の実態を把握するとともに、船舶所有者に対して適正な廃船処理を促し、従前から廃船処理において障害となっていた高額な処理費用及び法制上の問題点の解決を図る等画期的な廃船処理システムの構築を目指している。

    イ 廃棄物の不法投棄事犯に対する対応

 海洋への廃棄物の不法投棄事犯は、投棄者が処分費用を低く抑えたいという心理的・経済的事情に加え、産業廃棄物最終処分場のひっ迫などの諸問題により、今後も増加することが懸念される。

 海洋への廃棄物の不法投棄事犯は、陸上での不法投棄に比べ、目撃者等手掛かりに乏しい。また、投棄されてしまった後では、被疑者の特定が困難である。さらに、投棄された廃棄物を海中から引き揚げ、原状回復することは極めて困難であることから、不法投棄を未然に防止することが重要である。

 このため海上保安庁では、廃棄物の不法投棄防止対策を海洋環境保全対策の重要課題として捉え、関係自治体・警察と合同で空から不法投棄の状況を調査する「スカイパトロール」の実施、地方自治体が設置している「環境犯罪対策協議会」等への参画を全国的に推進する等、他機関と連携した監視取締りを強化している。

<警察との合同捜査による環境犯罪の摘発>

 11年9月、大阪海上保安監部は、関係四府県警と合同捜査本部を設置し、強アルカリ性の建設汚泥約139トンを適正処理せず、兵庫県等三県の陸上埋立処分場に違法に投棄していた大阪市の産業廃棄物処理業者の捜査に着手した。本件は、建設汚泥が海上輸送されていたため、警察と合同で捜査を行った。これは、海上保安庁と警察の本格的な連携による初の環境犯罪捜査事例であり、今後とも警察との連携を強化していくこととしている。

   B 船舶からの油、有害液体物質の不法投棄事犯への対応

 船舶からの油の不法排出事犯においては、現場に残された浮流油と容疑船舶から採取した残存油の同一性を証明することが捜査の決め手となる。しかし、油の中には経時変化の激しいものもあり、迅速に分析を実施し証拠を保全する必要があるため、海上保安庁では、各海上保安本部、海上保安大学校、海上保安試験研究センターにおいて油の分析を行う体制をとっている。

 また、有害液体物質は、沖合航行中に不法排出されることが多いうえに、油と異なり海洋において顕著な痕跡が残らず、発見が困難であることから、関係者からの情報をもとに捜査し、違反船舶の摘発を行っている。

<各管区海上保安本部、海上保安大学校、海上保安試験研究センターにおける油の分析>

 海洋汚染の発生現場において採取された汚染物質を早期に特定することは海上環境事犯の摘発に欠かすことができないことであるため、各管区海上保安本部、海上保安大学校及び海上保安試験研究センターは、各種分析機器を使用して迅速な分析・鑑定を実施しているところであるが、さらに、油種の特定、対照資料との類似性の判別等、分析鑑定の信頼性を確保及び向上させるために新たな油類識別システムを構築しているところである。

 

<外国船舶による海洋汚染に対する取締り>

 国連海洋法条約の締結に際し排他的経済水域及び大陸棚に関する法律等が整備されたことにより、8年7月20日から、海上保安庁においても、領海に加え、排他的経済水域及び大陸棚における外国船舶等による海上環境事犯について、一定の条件の下に海洋汚染防止法等を適用して取締りを実施している。

 また、その際には、船舶の航行の利益を考慮し、違反者の刑事手続継続のための出頭等を担保する担保金等の提供を条件として速やかに釈放を行う早期釈放制度(担保金制度)を適用している。

 海上保安庁が、11年に我が国周辺海域において確認した外国船舶による海洋汚染の発生件数は58件であり、このうち油による海洋汚染56件について海域別にみると、我が国領海内が40件、領海外が16件となっている(第2−5−1表参照)。

第2−5−1表 外国船舶による海洋汚染発生確認件数等の推移

  7年 8年 9年 10年 11年
海洋汚染の発生確認件数 油による汚染 日本の領海内 63 52 57 55 40
日本の領海外 18 28 23 22 16
小計 81 80 80 77 56
油以外のものによる汚染 3 1 3 3 2
合計 84 81 83 80 58
担保金制度適用件数 - 20 50 44 33
旗国通報件数 18 19 5 10 9

 海上保安庁が11年に検挙した外国船舶による海上環境法令違反は33件であり、これらに担保金制度を適用した。

 さらに、我が国の法令を適用できない公海での外国船舶による油の不法排出等については、国際条約に基づき、当該船舶の旗国に対して違反事実の通報を行い適切な措置を求める旗国通報制度を適用しており、11年は9件の旗国通報を行った。我が国は、旗国通報を昭和46年から実施し、11年末までにその数は544件に達している。

   C 臨海工場からの汚水の不法排出事犯への対応

 臨海工場から汚水が海洋に排出されると、水質の汚染は広範囲に及ぶこととなり、汚水の不法排出が長期にわたるほど水質の汚染は深刻なものとなる。このため海上保安庁では、臨海工場からの排出水を定期的に採取し、当該排出水が水質汚濁防止法の排水基準を満たしているかを確認している。汚水の不法排出があった場合には、これを検挙するとともに、違反事実を地方自治体に通報し、当該排出者に対する改善命令を求める等して、再犯防止を図っている。

<事例>

 11年11月、紋別海上保安部は、臨海工場の排出水調査中、水産加工場の排水口から汚水が排出されているのを認め捜査を進めた結果、同社工場長がCOD(化学的酸素要求量)について排水基準を大幅に超える汚水を海域に排出していたことが判明したため、「水質汚濁防止法」違反の容疑で検挙した。

 (3) 廃棄物の海域への排出状況

 廃棄物の中には、海洋環境に与える影響が少ないものとして、海洋投入処分が認められているものや、一定の処理を施すことにより、海域に排出できるものがあるが、海洋汚染防止法では、これら廃棄物の種類毎に排出海域及び排出方法等を規定している。

 海上保安庁では、海洋汚染防止法に基づき、廃棄物の排出に常用される船舶(廃棄物排出船)の登録、一定の有害液体物質の事前処理の確認並びに廃棄物の排出、油等の焼却及び船舶等の廃棄に関する計画の確認を行っており、これらの事務の実施により廃棄物の適正な処分を確保し、海洋環境の保全を図るとともに、海洋汚染に係るバックグラウンドデータとして排出状況等を把握している。

 11年末現在、廃棄物排出船の登録隻数は866隻で、これらにより11年中に海域に排出された廃棄物の量は約3,342万トンであった(第2−5−2表、第2−5−8図参照)。

第2−5−2表 廃棄物排出状況(( )は10年の排出量)

単位:万トン

  海洋投棄処分 埋立処分 増減
一般廃棄物 189
(219)
53
(42)
242
(261)
-7.3%
産業廃棄物 292
(320)
24
(18)
316
(338)
-6.5%
水底土砂 663
(705)
2,121
(1,616)
2,784
(2,321)
+20.0%
合計 1,144
(1,244)
2,198
(1,676)
3,342
(2,920)
+14.5%

第2−5−8図 廃棄物排出船等による一般廃棄物及び産業廃棄物の排出状況(11年)

 このうち、し尿・浄化槽汚泥などの一般廃棄物の排出量は約242万トン(10年261万トン)、無機性汚泥(建設汚泥等)などの産業廃棄物の排出量は約316万トン(10年約338万トン)で、それぞれ前年に比べ減少しており、廃棄物の陸上処分への転換が進んでいるものと思われる。

 また、港湾の浚渫工事等に伴い発生する水底土砂の排出量は約2,784万トン(10年約2,321万トン)で、前年に比べ増加しており、響灘大水深港湾計画などの大規模埋立工事の本格化に伴う受入量の増大が理由と思われる。

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