第3章 マリンレジャーの事故防止対策と救助体制の充実強化
1 事故分析のためのアンケート調査
海上保安庁は、12年4月28日から5月7日をマリンレジャー安全・振興旬間と定め、全国約4,500か所のマリーナ、釣具店等を訪問し、安全啓発キャンペーンを展開した。この機会を利用して、最近の事故の発生状況を分析するため、プレジャーボートの愛好者及び磯釣りの愛好者に対するアンケート調査を実施した。
(1) プレジャーボート愛好者
プレジャーボート愛好者に対するアンケートの回答者(有効回答数2850)の年齢構成は、水上オートバイの愛好者については30歳代以下が70%であり、ヨット、モーターボート等の愛好者は40歳代以上が81%であった。また、年間活動日数は、10日以内が20%、11日から20日が29%、21日から50日が32%、51日以上が17%であった。
アンケート中、「あなたは、操船中に乗揚げの危険を感じ、ハッとした経験又は後々危険な海域を航行していたことに気づき、ゾッとした経験はありませんか。」との問いには、全回答者の50%が「ある」と答え、その原因として浅瀬や定置網の設置状況等の把握が不十分であったとしたものが最も多く、全回答者の23%であった。ところが、このような危険を避けるためには海図等による浅瀬等の確認が必要であるにもかかわらず、GPSを使用していること等を理由として海図等を備えていない者が44%(水上オートバイを除く。)であった(第2−3−1図参照)。
第2−3−1図 海図等の備付け状況(プレジャーボート愛好者)
(複数回答)

一方、事故発生の際に生存率の向上に有効な救命胴衣の着用状況については、全回答者の35%が必ず着用していると答えたものの、作業性の悪さや暑い等の理由によりほとんど着用しないと答えた者が27%であった(第2−3−2図参照)。
第2−3−2図 救命胴衣の着用状況(プレジャーボート愛好者)

また、連絡手段としては、愛好者のうち87%(水上オートバイを除く。)が携帯電話を所持していると答えたが、何ら連絡手段を持っていない者は4%であった(第2−3−3図参照)。
第2−3−3図 保有連絡手段(プレジャーボート愛好者)(複数回答)

(2) 磯釣り愛好者
磯釣り愛好者に対するアンケートの回答者(有効回答数2617)の年齢構成は、40歳代の28%を中心に、概ね20歳代から60歳代まで幅広く分布している。また、年間活動日数は、10日以内が22%、11日から20日が27%、21日から50日が33%、51日以上が18%となっている。
アンケート中、「どなたでも、磯釣り中にヒヤッとした経験が1度や2度はあると思いますが、それは次のうちどのようなものでしたか。」との問いには、予期しない波に突然襲われた(全回答者の18%)又は局地的な波の発生等磯の特性を知らなかった(同9%)等により釣り中に波に引き込まれ、又は引き込まれそうになった経験を全回答者の34%の者が有している。また、救命胴衣の着用状況については、全回答者の半数以上の60%が必ず着用すると回答している一方、ほとんど着用しない者は、釣り場に持って行かない者を含め23%に上っている(第2−3−4図参照)。
第2−3−4図 救命胴衣の着用状況(磯釣り愛好者)

2 マリンレジャー関係者に対する安全指導等
マリンレジャーを安全に楽しむためには、愛好者自らが安全に対する認識を持つことが大切である。しかし、マリンレジャーの事故の原因は、海難発生の現状から見る限り、初歩的な知識・技能の不足等基本的遵守事項の欠如によるものが多く、海難防止思想がまだ十分に普及しているとはいえない状況にある。このため、マリンレジャー愛好者の安全意識の高揚が喫緊の課題である。
海上保安庁では、海難防止強調運動を展開し、愛好者を対象に海難防止思想の普及、高揚を図っているほか、常日頃から、マリーナ等への訪問等の機会をとらえ、マリンレジャー愛好者に対し、気象・海象の的確な把握や知識・技能に応じた活動についての事故防止指導等を行っている。
さらに、全国各地において小型船舶の安全に関するビデオ、スライド等の教材を活用した海難防止講習会及び海上安全教室、訓練等も開催し、安全に対する知識・技能の向上等を図っている。
プレジャーボート、水上オートバイ及び遊漁船については、その種類ごとに、事故防止のための遵守事項を取りまとめたパンフレットを作成し、11年においては約29,000隻のプレジャーボート等を対象に訪船指導等の際の安全指導に活用した。
水上オートバイについては、パーソナルウォータークラフト(PW)安全協会と合同の海上安全パトロール活動等の連携を図り、事故に結びつくおそれのある危険な行為の防止に重点を置いた安全指導を行っている。
遊漁船については、年末年始における一斉指導や(社)全国遊漁船業協会、遊漁船業団体等が開催する海難防止講習会に海上保安官を派遣するなど、機会あるごとに関係者に対する安全指導を行っている。
3 「ボート天国」の実施及び海上行事への協力
マリンレジャーの安全を確保することにより、その健全な発展に資するための施策の一環として、ボート天国を昭和63年より実施している。
これは、一般船舶の航行の少ない休日等に、都市部及びその近郊の港内に、小型ヨット、ボードセーリング、手漕ぎボート等の小型舟艇が遊走できるよう一般船舶の航行や停泊を制限する海域を設け、一時的に開放するものである。
これにより、気軽にマリンレジャーを楽しんでもらうとともに、水上オートバイや小型ヨット等の体験乗船やレースなどを通じて、安全思想の普及及び高揚と技術・マナーの向上を図るもので、11年度は全国24か所で延べ32日開催され、約41万人、約1,400隻が参加した。
海上保安庁では、今後とも、港湾管理者、地元市町村等と協力して、ボート天国を実施していくこととしている(第2−3−5図参照)。
第2−3−5図 11年度ボート天国実施港

また、マリンレジャー行事が安全かつ円滑に実施されるよう、これらの行事の相談窓口として、昭和63年7月、全国の各海上保安部署等にマリンレジャー行事相談室を設置し、12年3月末現在、121か所設置している。
マリンレジャー行事相談室では、訪れた相談者に直接対応するほか、書面や電話でも相談に応じており、ボート天国や海上花火大会など行事開催に関すること、マリンレジャーに係る競技会の実施やクルージングに伴う安全対策に関すること、海図の入手に関すること、気象・海象情報に関することなど多岐にわたってマリンレジャーに関する相談を受けつけており、その地域に合ったきめ細やかな指導や助言、情報提供を行っている。