海上保安庁の体制
海上保安庁の業務は、海上における治安の維持、海上交通の安全確保、海難の救助、海上防災・海洋環境保全など多岐に渡ります。そして、その業務の舞台となる領海及び排他的経済水域は我が国の国土の約11倍にも及んでいます。さらに海難の救助について見れば、国際条約等に基づき我が国の国土の約36倍にも及ぶ広大な海域を担任しています。これらの業務を海上保安庁では女性職員327人を含む12,249人(平成13年度)で実施しています。これは、警察職員267,599人(平成12年度)に比べ約22分の1に過ぎません。
このため海上保安官は海難救助、消防、犯罪捜査、環境保全等と一人何役もこなし、日々の業務に追われています。特に最近では治安状況の悪化が大きな社会問題となりつつあり、海上保安庁に対する期待はますます高まりを見せています。そのような状況の中でも質の高い行政サービスを提供していくため、常に業務の見直しとそれに応じた適切な組織・装備の整備、教育訓練を行いつつ、必要な定員の確保と適正な配置に努めていく必要があります。
![]() 現場で活躍する女性海上保安官(海上保安庁初のママさん機長) |
定員![]() |
1, 現状
海上保安庁は広大な海上をフィールドとしていることから、国の組織として全国一元的に効率的に機能しており、都道府県が中心の警察とは性格が異なっています。具体的には、海上保安庁の組織は、長官の下に総務部、装備技術部、警備救難部、水路部、灯台部等から成る本庁のほか、全国を11の海上保安管区に分け、それぞれに管区海上保安本部を置き、海上保安業務を実施しています。
また、管区海上保安本部の下には、主として警備救難業務を担う海上保安部(65ヶ所)及び海上保安署(51ヶ所)、航路標識業務を行う航路標識事務所(66ヶ所)等が業務ニーズに対応して全国に置かれています。
この他、文教研修施設として、海上保安大学校(広島県呉市)及び海上保安学校(京都府舞鶴市)を置いています。
2, 平成13年度の組織改正
最近、海上保安庁の組織については、以下のようなニーズが高まりつつありました。
このため、平成13年4月から、主に次のような内容の組織改正を行い、適切な業務執行体制を整備しました。
- 海上保安庁を取りまく社会経済情勢の変化に対応するため、本庁各部の業務の垣根を超えて全庁的に対応する体制の必要性。
- 密輸・密航等の海の秩序や安全を脅かす様々な国際的事案が多発・深刻化している状況に迅速・的確に対応できる体制の必要性。
- 航路標識事務所と海上保安部で調整を要している船舶交通の安全確保の業務を効率よく実施できる体制の必要性。
- 海上保安庁の総合力を強化するため、本庁警備救難部及び水路部の参事官を総合調整を行う総務部に移管すること。
- 国際海上犯罪について一元的に業務を遂行するため、本庁警備救難部に国際刑事課を設置すること。
- 航路標識事務所(10か所)を海上保安部と統合し、船舶交通の安全確保のための業務を効率化すること。
3, 今後の課題
しかしながら、海上保安庁をとりまく情勢を見ると、密輸、密航等を組織的に行う国際犯罪組織に対する捜査体制の充実、海上保安官による不祥事案の発生を防止するための監察体制の強化、IT革命の進展や環境問題の顕在化等に対応した海洋情報の収集・提供体制の再構築などの課題が見受けられる状況にあります。また、海上保安部、海上保安署等の配置等についても、時代のすう勢に適合しきれていない面があることも否定できません。このため、今後とも海上保安庁の組織の見直し・整備を継続的に進めていく予定です。
皆さんが海上保安庁に出動を要請した時、私たちは「できません」、「行けません」とは言えません。海上保安庁の能力に強く期待し要請されることに誇りを持っており、その期待に応えることが私たちの使命であるからです。
能力とは何を指すのでしょうか。それは、人の力であり、人が孤立無援の海上で力を発揮するための船艇・航空機などの装備なのです。期待される能力は社会情勢の変化とともに変化しており、期待に応じた能力を持つ装備を整えなければなりません。また、現在ある装備の能力が常時100%発揮できるように備えておかなければなりません。これら2つを実行することで、皆さんの期待に応えられると私たちは考えています。
船艇・航空機などの装備が海上保安庁の能力を発揮するための基盤になっているということを、また限られた予算の中でこれらの充実及び維持をいかに効果的に進めていくかという難しい課題に取組んでいるということを、皆さんに理解して頂けることを私たちは希望しています。
1, 船艇・航空機の現状
海上保安庁は、広大な海域での極めて広範多岐にわたる業務を実施するため、平成13年7月現在517隻の船艇(警備救難業務用船442隻、水路業務用船12隻、航路標識業務用船60隻、教育業務用船3隻)及び75機の航空機(飛行機29機、ヘリコプター46機)を保有しています。
因みに、我が国の領海及び排他的経済水域の面積を巡視船艇数で割ると、1隻当たり約1万3千km2(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を合わせた面積に相当)になり、巡視船艇への業務ニーズがいかに大きなものかおわかりいただけるのではないでしょうか。
航空機の場合は1機当たり約6万km2(四国と九州を合わせた面積に相当)となります。
2, 巡視船艇の機能向上
日本周辺の海上を取り巻く情勢は常に変化しています。特に、平成11年3月に能登半島沖で発生した不審船事案は、我々に大きな教訓を与えました。海上保安庁では、平成12年度内にこのような事案への対応能力を強化するため、高速特殊警備船3隻をはじめ、計11隻の巡視船艇を配備しました。
平成13年度は前年度からの継続分として、大型巡視船1隻及び大型巡視艇1隻を整備するほか、新規分として外国人漁業の監視取締り、悪質巧妙化する密航・密輸事犯などに迅速的確に対応するため、速力、夜間監視能力、捕捉能力及び操縦性能等の向上を図った高性能の中型巡視船2隻及び大型巡視艇1隻を整備していくこととしています。
3, 航空機の機能向上
航空機は船舶に比べ機動力と監視能力が優れていることから、広範な海域における不審船、外国漁船、密航・密輸船などの捜索監視活動や、海難に遭遇した人・船舶の捜索救助活動に極めて有効です。
このため、高性能なレーダーなどを装備することにより既存の航空機の高性能化を図るとともに、高性能な中型ヘリコプター(ベル412)を平成12年4月に1機、平成13年5月に1機を配備しました。
今後は、さらに航空機の航続性能や捜索監視能力を向上させるため、新型ジェット機2機、中型飛行機(ビーチ350)3機をそれぞれ整備していくこととしています。
新型ジェット機の性能 1. 航続時間の増大 → 捜索可能面積が増大 2. 新たな監視システムの搭載 → 天候に左右されず監視が可能 3. 輸送能力の増大 → 必要な人員・資機材を空輸 4. 航続距離の増大 → 現場に直行可能 4, 通信体制の整備
海上保安庁において、本庁、管区、部署間を結ぶ通信回線は、従来、音声伝達を主体としたアナログ回線でしたが、増大する業務ニーズや災害等に対応するため、平成10年度から、画像や大量のデータの伝送に対応した高速デジタル回線への移行を進めるとともに、本庁と管区間を結ぶ基幹回線については、災害等により回線が切断した場合において、他のルートで回線が確保できる耐災害性にも優れた回線の整備を進めており、平成13年度中に完了する予定です。
また、災害等の対応としては、地震、津波災害等の大規模自然災害発生時や油流出事故等の大規模海難発生時において、迅速かつ的確な防災対策を実施するため、ヘリコプターから撮影した現場画像を海上保安庁のみならず官邸をはじめ防災関係機関へ伝送することが可能なヘリコプター撮影画像伝送システムの整備を進めています。
ヘリコプター撮影画像伝達システムイメージ図
クリックすると大きな画像がご覧になれます。5, 巡視船艇・航空機の経年対策
平成13年7月現在、日本全国で活躍している巡視船艇・航空機の隻数、機数を就役年度別にみると、次のとおりとなっています。
このうち、就役後の経過年数が、20年を超えるような巡視船艇・航空機にあっては、長年にわたる使用に伴い船体・機体各部が衰耗するとともに、各機器の維持が困難になってきます。
老朽化した巡視船艇・航空機が増えていった場合、現場での海上保安業務の遂行に支障を来すことがあることから、これらの巡視船艇・航空機の円滑な代替を進めるとともに、船体・機体各部の衰耗状態を的確に把握し、技術的知見に基づいた最適な整備を計画的に実施することにより、巡視船艇・航空機の能力を確保していくことが大きな課題となっています。
1, 教育訓練の現状
海上保安官は、海上という厳しい環境の中で、複雑多岐にわたる専門的な業務を遂行しなければならず、海上保安官としての自覚はもちろんのこと、専門的な知識・技能、おう盛な気力と強じんな体力が要求されます。このため、海上保安庁では、海上保安大学校(幹部職員養成)と海上保安学校(一般職員養成)において、全寮制の下で厳格な中にも創意工夫をこらした初任教育を行い、多様化する社会情勢に柔軟に対応できる海のスペシャリストとしての海上保安官を育成しています。また、第一線で活躍している海上保安官についても業務ニーズの変化等に応じた専門的な知識・技能の向上を目的として、潜水技術、語学研修など各種の研修を実施しています。
2, 新たなる初任教育のあり方
平成13年に開校50周年を迎えた海上保安大学校と海上保安学校は、半世紀にわたり我が国の主権と国民の生命、財産を守る海上保安官を育んできましたが、ますます国際化と高度情報化が進んでいる今日、効率的に業務を遂行するためには、海上保安庁の総合力主義を支え得る「海上保安業務の基本を習得した上でより高度な専門性を有する新しい海上保安官像」が求められています。このため、初任教育においては、海上保安業務に関する全般的な基礎教育を充実するとともに、資格取得に偏重した専門教育についても見直しを行い応用能力の強化を図るなど次代を担う海上保安官を生み出していく必要があります。
3, 航空課程の新設
平成14年4月に海上保安庁の航空機の操縦要員を養成する教育課程として、海上保安学校に航空課程が新設されます。従来は海上保安大学校及び海上保安学校の卒業生を防衛庁へ委託して事業用操縦士(飛行機)の資格を取得させた後、回転翼機(ヘリコプター)操縦要員については海上保安学校宮城分校の研修課程において必要な資格を取得させていました。航空課程の新設により、航空機の操縦要員として適性のある者(視力等)を確保できるとともに、回転翼操縦要員の養成期間を短縮することが可能となります。
最近、「118番」の周知活動などで、海上保安庁もテレビ、新聞などのマスメディアに登場する機会が増えてきました。しかし、これからの海上保安行政をより良い方向に展開していくためにも広報への取り組みをより一層強化することによって、地域との密接な関係を築き、地域の声を反映しながら、真に国民に愛される海上保安庁を目指していく必要があると考えています。
海上保安庁の活動のほとんどは海上で行われるため、残念ながら一般の方々の目に触れる機会は多くありません。しかし現場の海上保安官は大荒れの海の上での人命救助活動、闇夜に紛れて行われる密漁の取締り、巧妙に船内に隠されている密航者や密輸品の摘発など、日夜日本の海の安全を守るための様々な業務に当たっています。
このため、このような海上保安官の日頃の努力をできる限り多くの方に紹介し、それを理解して頂き、その上で国民の声を聞くことに全力を挙げています。
具体的には、
という目標を立て、海上保安業務の実施状況やその映像の積極的な公開・説明に努めるほか、次のような施策を行っています。
また、インターネット上のホームページの充実にも力を入れていますので、少しでも多くの方々にご覧頂ければ幸いです。URL (ホームページのアドレス)は、http://www.kaiho.mlit.go.jp/です。
メールによるご意見、ご要望も受付ております。
海上保安庁の「うみまる」をご存じですか
海上保安庁50周年を記念し平成10年に、イメージキャラクター「うみまる」は誕生しました。本レポートの特集でも案内役として登場しているこの“うみまる”は「着ぐるみ」、「ぬいぐるみ」して広報活動に活躍しているほか、広報用子供ソフトに出演したり、パンフレット、シール上でも活躍しています。また、今後は妹の誕生が噂されています。「うみまる」をどうぞ応援してください。
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| 「うみまる」に関するお問い合わせは、海上保安庁政策評価広報室広報企画係 〒100‐8918 東京都千代田区霞が関2‐1‐3 TEL :03‐3591‐9780(FAX 兼用) E‐Mail :shitsumon@kaiho.mlit.go.jp まで。 |
1, 監察の目的
海上保安庁が行う行政の実況を監察し、もってその民主的かつ能率的な運営を図るとともに、厳正な規律を確保することを目的として監察を実施しています。
2, 現状
監察には、業務の改善及び適正な運営を図ることを目的とする「業務監察」、巡視船艇等の事故及び不祥事案の発生の事実と原因を究明して、同種事故等の再発の防止を図ることを目的とする「事故監察」の二つがあり、これらを組み合わせて監察を実施してきました。
しかしながら、近年、海上保安庁における事故及び不祥事案の発生件数は、増加傾向にあります。特に平成12年には22件の不祥事案が発生・判明したほか、平成13年4月及び6月には、過去の業務不適切処理事案等がマスコミに取り上げられるなどし、国民の信頼を大きく損なう誠に残念な結果となりました。
3, 今後の方針
海上保安庁では、事故・不祥事案の発生件数が増加傾向にあることを重く受け止め、平成13年4月に「海上保安庁業務・紀律改善委員会」を設置するとともに、同年5月から6月上旬にかけて、各管区海上保安本部において全部署を対象に、業務処理及び職場内紀律に係る総点検を実施しました。また、同年6月下旬には同点検結果等を踏まえ、管区監察主幹会議及び同委員会を開催し、「業務処理体制の見直し」、「職場内規律の一層の向上」、「監察体制の充実」等を柱とする「業務処理及び職場内紀律改善要綱」をとりまとめたところです。
同改善要綱の「監察体制の充実」については、監察の主眼を「不祥事案等の再発防止」から「不祥事案等の未然防止」に転換することとしています。このため、業務監察については、組織機能、管理監督体制、業務の合理化・効率化、倫理教育等に焦点を合わせた内容に拡充するとともに、その頻度も大幅に向上させて実施することとしています。また、監察結果の確実な実現を図るため、指摘事項及び改善事項をフォローアップする点検監察を新たに実施することとしています。
海上保安庁は、これらの取り組みを強力に推進し、国民の信頼の回復に全力を挙げていくこととしています。
管区監察主幹会議の様子