海のIT戦略


 (1) 海でのITの活用


 海においても、物流の効率化や安全性の向上といった観点から情報技術が取り入れられつつある。

@ 港湾EDI

 従来の港湾諸手続は、入出港届、係留施設使用許可申請等、申請が多岐にわたる上、複数の省庁に書類を持参しなければならないため非常に手間と時間を要していた。これを解決するため、必要な手続のEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)化が急速に進んでいる。船社・船舶代理店は、インターネットに接続できる環境さえあれば、簡潔・迅速に手続を行うことが可能になる。

 EDIシステムをいち早く取り入れたシンガポールでは、港湾諸手続に20種類の書類を要していたものが一つの電子書類に簡素化され、また、手続に約2日を要していたものが3分以内に短縮された。

A AIS

 AIS(Universal ship-borne Automatic Identification System:自動船舶識別システム)とは、船舶が自船の情報(船名、船舶の大きさ、船舶の種類、位置、針路、速度)を継続的に発信し、他船から同様の情報を自動的に取得するシステムのことである。

 操船指揮者は、付近を航行する他の船舶に対し、自船を安全に航行させるために協力動作(例えば、もう少し、陸岸側を航行してほしいなど)を求めたい場合がしばしばある。この場合、無線で相手船を呼び出し、お互いの意思を伝え、相互に今後の動きを確認するのが最も航行の安全に資する。しかし、無線で相手船を呼び出すためには、事前に船名等を確認することにより相手船を特定しなければならないため、実際には、余裕を持って相手船を無線で呼び出すことは困難であった。

 ところが、AISが導入されることにより、相手船の船名等を比較的遠距離から自動的に把握できるため、余裕を持って相手船を無線で呼び出すことが可能となる。また、AIS情報をレーダー画面や電子海図上に表示させることで、操船指揮者は自船と相手船の位置関係や衝突の危険性を直観的に把握できるようになり、船舶間の衝突回避などに一層役立てることができる。

 国際海事機関(IMO)では、SOLAS条約(International Convention for the Safety of Life at Sea, 1974:1974年の海上における人命の安全のための国際条約)第X章の改正にあわせ、AISの搭載を義務付ける船舶及びその時期について検討している。


 (2) 海上保安庁の取り組み


@ 救助率の向上のために

 救助率を向上させるためには、事故情報の早期入手、救助対象への救助勢力の早期投入、救助対象の早期発見が必要不可欠であり、海上保安庁では、これらの分野において情報技術を活用し、救助体制の強化を図っている。

 このうち、事故情報の早期入手については、昨今の携帯電話の普及を受け、遭難者が自分の位置を把握していない場合においても、携帯電話とピンポイントで位置測定をすることが可能な小型GPS受信機を使い、トラブル発生情報と自分の位置を自動的に救助機関に伝える新たな緊急時位置通報システムの開発・普及について検討を進めるとともに既存の民間システムの普及を支援している。

 また、救助対象への救助勢力の早期投入については、巡視船艇の動静を地図画面上で常に把握し、事故発生情報の入手後直ちに、事故現場に最も近い巡視船艇を現場に向かわせる体制を構築することとしている。

 さらに、救助対象の早期発見については、救助対象の現在及び将来の位置を推算するための漂流予測を、従来は多くの場合に過去の海象データの統計値を使って行ってきたが、最近では、現場海域で観測される風と海潮流の現況データ及び風の予報値をリアルタイムメッシュデータとして取り込み、24時間、オンラインでの対応を可能とする新たな漂流予測システムを開発するとともに、その精度の向上のための研究を進めている。

A より円滑な船舶交通の実現のために

 特に船舶のふくそうする海域では、海上交通センターにおいて、船舶から発信されたAIS情報を収集し、海域監視用のレーダー映像上で一括して表示することにより、危険物積載船やタンカーの動静をリアルタイムで把握することが可能となる。また、船名を自動的に把握できることから、監視対象船舶を無線で容易に呼び出すことができるようになる。これにより、従来よりも迅速かつきめ細かい情報提供と航行管制が可能となり、より円滑な船舶交通の実現が期待される。このため、海上交通センターにAISを導入するための研究を行っている。

B ユーザーが必要とする情報を提供するために

 海上保安庁では、船舶の動静、気象・海象情報、気象警報・注意報、海難の状況や海上での工事作業状況、各種海上イベント情報等、ユーザーに有益と思われる情報を、従来からNAVTEX、電話、無線電話、インターネット等を利用して提供してきた。今後は、ユーザーが必要とする情報をさらに収集・整理し、容易に入手できるように提供することとしている。

 例えば、船舶交通の安全に関する情報の収集については、全国の主要な灯台等の航路標識に、AIS、テレビカメラ、気象・海象情報等を収集するセンサーを整備して収集機能を強化することを検討している。

 また、情報の整理については、収集した情報をデータベース化すると同時に、利用者が必要な時に必要とする情報を取り出せるように、情報の項目ごとにメニュー化することを検討している。

 情報の提供については、整理された情報を、テレホンサービス、FAXに加え、AIS、携帯電話によるインターネットサービス、ディファレンシャルGPS、インターネット等、様々な情報提供手段を利用して取り出せるようにすることを検討している。

C 港湾諸手続を簡素化するために

 港湾諸手続のEDI化については、8年から本格的に検討が開始され、9年4月に閣議決定された「総合物流施策大綱」に、11年度までを目途に主要港湾における入出港の行政手続きをEDI化することが盛り込まれた。

 運輸省港湾局、海上保安庁及び港湾管理者は、港湾管理者・港長に係る港湾諸手続のEDI化について検討を進め、11年10月から主要港湾における港湾EDIシステムの運用を開始した。

 今後は、申請者利便の一層の向上を図るため、対象業務の拡大等更なるペーパーレス化を進めていく。

 また、港湾EDIシステムと税関手続をシステム処理している海上貨物通関情報処理システム(Sea-NACCS)等とを接続し、港湾諸手続のワンストップサービス化の早期実現を目指していく。

 港湾EDIシステムは、次の2通りの申請・届出方法を採用している。

ア Web方式
 港湾EDIシステムのホームページ上にある申請・届出様式に書き込む様式で、インターネットに接続できる環境であれば、パソコンに搭載されている一般的なブラウザ上で申請・届出が行える。

イ UN/EDIFACTメッセージを用いたメール方式
 国連標準のUN/EDIFACT(United Nations/Electric Data Interchange For Administration:行政、商業、運輸のための電子データ交換規則)メッセージをメール方式により申請・届出を行うものである。

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